人とうまく関われない、身構えてしまうのは何故?

納得できる人生、自分らしい生き方とは何かを求める人たちに、活動をともにし仕事や日常生活を通して人生を学ぶ実践の場として、35年にわたり伊東聖鎬が主宰しているのが「空間塾」です。
空間塾生の一人、40歳の男性Iさんと伊東先生とのコミュニケーションを紹介します。

騙されないように身構えてしまう

男性
「僕は人と接する時に、人見知りというか、身構えてしまうんです。それで人とうまく関われないんです。どうしてでしょうか?」
伊東
「人を疑っているから、騙されないように身構えるんだよね」
男性
「そうなんです。でも僕だけではなく、そういう人は多いと思います。今ネット社会だからますます増えていると思います。騙されないように疑心暗鬼になって積極的に人と関われない人が多いと思います」
伊東

「子供の頃は、家庭で教えられることが、常識であり普通だと思っている。
それ以外の考えを知らないからそれも当然で、小学生までは大体皆そうだと思う。
中学生になるといろいろな生活環境の友人が増えるから、家庭で教わったことがけっして普通とは限らないということも分かってくる。
そして社会経験を積み、人や社会にもまれる中で、家庭環境の影響が薄まって、何が普通なのかということも身につけていく。
しかし、人や社会にもまれないと、いつまでも家庭環境の影響を持ち続ける。

親元から離れる時に『都会は騙そうとする人間が多いから騙されるなよ』と、親から言われる。
子供は親のいうことが本当だと思っているから、最初は騙されないように構えている。
若い頃はほとんどそうだよ。
君も知っているように、学校を卒業したばかりの人が何人も空間塾にきたけれど、皆そうだったでしょう。
こちらが協力したいと思っても、相手が「騙されないように」と構えているから、協力のしようがないんだよ。
しかし、社会経験を積んでくると「何で人を騙す必要があるのか」「人を騙す理由もない」ということが分かってくる。
さらに積極的に社会や人と関わっていくと、今度は自分が協力する立場になり、多くの人は「騙されないぞと身構えている」ということに突き当たる。

騙されないようになるには?

伊東

中には騙そうとする人間も確かにいるが、その区別は難しい。
どうすれば区別できるようになるのか?
それは痛い目に遭うことだよ。
騙されて痛い目に遭うことで区別できるようになるんだよ。
だから痛い目に遭うのは勉強なんだよ。
僕はどれだけ勉強代を払ってきたことか…。
何度も詐欺に遭ったし、お金を貸して踏み倒されたし、一千万、いや二千万円は軽くあるよ。
騙されて、ひどい目に遭うことで、分かってくるんだよ。
65歳を過ぎてようやく騙されなくなってきたね。

「何であんな人に貸すの?」と、よく聞かれる。
「貸した金は返ってこないと思え」という人もいる。
それじゃ「貸すな」となるのか?それは違うよ。
こちらがお金を持っていて、相手が持っていないのなら、貸さない訳にはいかないよ。
でも、現実には貸さない人の方がは多いと思うよ。

僕はお金ではずっと苦労してきたから。
30代の頃、本当に困って中学時代の親友に貸して欲しいと頼んだら「親から親友にお金を貸したら友情が壊れると言われているからだめだ」と言われた。
「親友だからこそ頼んでいるのに、だったら親友って何なんだ」
結局その友人とは付き合いをやめた。
姉に頼んだら利息付きで貸してくれた。
何で姉弟の間柄で利息をつけるのか、理解できなかった。
人っていうのは、親から言われたことに囚われて、疑う必要があるのかないのかの区別もつかないんだなと思ったね。
もし、お金を貸して戻ってこなかったとしても、親友なのだから「彼の人生において必要だったんだから協力できてよかった」と考える方がいいと思う。

世間が分かる本当の大人になること

伊東

僕は早い時期に、家庭の影響をなくさなければならないと考えていた。
自分の家庭で教えられたことしか知らないのは世間知らず。
それでは人に、社会に通用しないと考えていた。
だから早くから「世間が分かる本当の大人」にならなければいけないと、全国各地を放浪し、100の地域で100の仕事をしようと考え、実行した。
そのおかげでいろいろな経験をできた。
「人見知りする、構える」というのは世間知らずと言うことなんだよ。
僕はそれを「田舎者」と言っている。
田舎に住んでいるという意味ではない。
「都会に住んでいる田舎者」もいれば、「田舎に住んでいる都会者」もいる。

親や家庭環境という他人の考えに影響を受けて生きるのか?
それとも自分の人生を自分で拓くのかということなんだよ。
自分の人生を生きたいのなら、人や社会にもまれ、痛い目にたくさん遭って「世間が分かる本当の大人」になることだよ。

 

2013年9月6日